トッテナムのセンターバック、ミッキー・ファン・デ・フェンを語るうえで “スピード” は絶対に外せない。
ひとたびトップスピードに乗ると、相手FWとの距離は一瞬で縮まり、裏抜けもカウンターも無力化してしまう。
センターバックとは思えない加速力と追走力は、もはや“反則級”。
では、ファン・デ・フェンは実際どれほど速いのか?
そしてこの“怪物級のスピード”が、トッテナムの戦術にどんな影響を与えているのか?
この記事では、その答えをデータと具体例をもとに分かりやすく解説する。
ファン・デ・フェンの基本情報と経歴
まずは、ミッキー・ファン・デ・フェンの基本情報とこれまでのキャリアを簡潔に整理する。
必要なポイントを以下にまとめた。
■ 基本情報
生年月日:2001年4月19日(24歳)
身長:193cm
国籍:オランダ
ポジション:センターバック
利き足:左足
■ 経歴
2019-20:フォレンダムU19 → FCフォレンダム
2021-22:FCフォレンダム → ヴォルフスブルク
2023-24:ヴォルフスブルク → トッテナム
ファン・デ・フェンはどれだけ速い?驚異的なスピードを徹底解説
ファン・デ・フェンの最大の武器は、センターバックとは思えない“異次元のスピード”である。
その速さは、ドイツやオランダでプレーしていた頃からすでに際立っていた。
ヴォルフスブルク在籍時の2022-23シーズンには、ブンデスリーガ全選手中トップとなる時速35.97kmを記録。
さらに、オランダ時代に彼と共に働いていたスタッフによれば、トレーニング後の疲れた状態でも60メートルを7秒台で走ったことがあるという。
そしてトッテナム移籍後の2024年1月、ブレントフォード戦ではついに時速37.38kmという、プレミアリーグ史上でも最速クラスのスプリントを叩き出した。
これらの数字が示しているのは、まさに「世界屈指のスピードを持つセンターバック」であるという事実だ。
ファン・デ・フェンが後方にいるだけで、相手が裏へ抜けても追いつけるという安心感が生まれる。
スパーズの守備が安定する大きな理由の一つが、この圧倒的なスピードにある。
ファン・デ・フェンの圧倒的スピードがトッテナムにもたらす影響力
裏抜け対応と広大なカバー範囲
ファン・デ・フェンの圧倒的なスピードは、トッテナムの守備に大きな影響を与えている。
特に際立つのが 裏抜けへの対応力だ。
相手にディフェンスラインの裏を取られると、一気に決定機を作られやすい。
しかし、ファン・デ・フェンが後方にいるだけで状況はまるで変わる。
スルーパスで完全に抜け出されたように見えても、彼は驚異的な加速で瞬時に追いつき、ピンチを未然に防ぐことができる。
さらに特筆すべきは、スピードを活かした 広大なカバー範囲。
サイドバックが高い位置を取っている場面でも、ファン・デ・フェンは広大なスペースをケアできる。
相手ウイングが突破した時でも、素早い横移動から危険を消し、守備全体のバランスを整えてくれる。
こうしたファン・デ・フェンの圧倒的なスピードがトッテナムの守備を支える土台となっていると言えるだろう。
また、下記の記事ではファン・デ・フェンのセンターバックとしてのタイプについて解説しているので、ぜひ合わせて読んでほしい。
スピードが生む圧倒的な推進力
ファン・デ・フェンのスピードは、攻撃面にも大きな影響 を与えている。
その一つがセンターバックとは思えない ボールの推進力(持ち運ぶ力) だ。
2024年8月と9月、彼はプレミアリーグで “アシストに繋がった最長キャリー記録” のトップ5に、わずか2カ月で2度もランクインした。
エバートン戦では 60.4m、マンチェスター・ユナイテッド戦では 56.1m を一気に持ち運び、いずれもゴールに直結している。
センターバックがこれだけの距離をボールを持って運ぶ例は極めて珍しく、まさに異常値と言える。
さらに、チャンピオンズリーグのコペンハーゲン戦でも、ファン・デ・フェンは驚異的な記録を残している。
自陣の深い位置でボールを受けると、そのまま一気にドリブルで前進。相手陣地まで67.7メートルをわずか10秒で運び、そのまま自らゴールを決めた。
この“67.7mキャリーからの得点”は、Optaのデータ上では 2015-16シーズン以降のチャンピオンズリーグで最長距離のキャリーから生まれたゴール となっている。
この推進力は偶然ではない。
彼はヴォルフスブルク時代も平均キャリー距離11.8m(CB最長) を記録しており、ボールを受けた瞬間に一気に前へ運ぶ“運動能力+判断力”が備わっていた。
この「スピードによる推進力」こそ、トッテナムにおいて大きな武器となっている。
プレミアの強豪CBと比べて見えるファン・デ・フェンの特徴と課題
次に、他のプレミアムリーグのセンターバックと比較してみた。
ファン・デ・フェンを、サリバ、ガブリエル、ファン・ダイク、ルベン・ディアスといったプレミア屈指のCBと比較すると、彼の特徴がよりはっきり浮かび上がってくる。

数字で見えるファン・デ・フェンの強み
・ボールリカバリー数(41回:比較選手中トップ)
最も大きな強みは、失われたボールを回収する力の高さだ。
41回という数字は守備範囲の広さとスピードを活かした回収力がリーグトップクラスである証拠 だ。
・タックル&地上戦の強さ(タックル13回:トップ、地上戦の勝利数21回:2位)
タックル成功数も比較したCBの中で最多。
また、地上戦の勝利数21も上位に入り、 対人守備の強さはプレミアでも上位クラス と言える。
特にファン・デ・フェンは「スピードで詰める → 体を入れる」までの動作が非常に速く、相手が判断する前に主導権を奪えている点が大きい。
・インターセプトの多さ(12回:トップ)
インターセプト数も多く、読みの鋭さが際立つ。
これはただ脚が速いだけではなく、「どこにボールが出るか読む力」「その瞬間に動き出せる反応速度」の2つが揃っている証拠だ。
・得点力(3得点:トップ)
センターバックでありながら3得点を記録している点も見逃せない。
トーマス・フランク監督はセットプレーを重要な得点源として位置付けており、ファン・デ・フェンはその戦略の中で欠かせない存在となっている。
改善が求められる空中戦の課題
・空中戦(Aerial Duels Won:13回)
他のトップCBと比べると、空中戦は明確な課題となっている。
ファン・ダイク:48
ガブリエル:38
サリバ:26
ディアス:23
ファン・デ・フェン:13
プレミアの名だたるCBと比べても低く、空中戦の間合いや競り方にまだ改善の余地がある と言える。
スピードと引き換えに抱えるケガのリスク
ファン・デ・フェンの爆発的なスピードは、まさに唯一無二の武器と言える。
しかし、その圧倒的なスピード能力は 身体への負荷が大きく、ケガのリスクを高めている可能性がある と指摘されている。

上の表は、彼の負傷履歴をまとめたものだ。
トッテナム加入後は 2年連続で70日以上の離脱 を経験しており、シーズン中に 複数回の負傷離脱 が発生していることが分かる。
このように、ファン・デ・フェンは“世界トップクラスのスピード”と引き換えに、ケガと常に隣り合わせの状況にあると言える。
最後に
ファン・デ・フェンの“怪物級のスピード”は、トッテナムの守備と攻撃の両方を底上げしている。
裏への対応、広大なカバーリング、ボールを一気に前へ運ぶ推進力──どれも彼の圧倒的なスプリント能力があるからこそ成り立つ強みだ。
確かに、その爆発的なスピードは身体への負担も大きく、ケガのリスクとは常に隣り合わせだ。
それでも、ファン・デ・フェンがピッチに立つだけで守備ラインの安定感は段違いで、彼が今のトッテナムに不可欠な存在であることは間違いない。
今後さらに経験を重ね、空中戦などの課題を克服すれば、ファン・デ・フェンはプレミアリーグでもトップクラスのセンターバックへと成長していくだろう。
これからも、彼の進化と“異次元のスピード”に注目していきたい。


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