本記事では、ロメロやファン・デ・フェン、新加入の高井幸大など、トッテナムのセンターバック陣の特徴とプレースタイルを解説する。
後半では、センターバックを「ビルドアップ型」「ストッパー型」など4つのタイプに分類し、各選手がどのタイプに当てはまるのかを紹介する。
この記事を読めば、トッテナムの守備陣の強みやチーム内での役割を短時間で理解できる。試合観戦をより深く楽しむための参考になるだろう。
トッテナムのセンターバック完全ガイド|ロメロ、ファン・デ・フェン、高井幸大ら守備の柱を徹底解説
トッテナムのセンターバック選手一覧

まずは、トッテナムのセンターバック6選手について、基本情報を一覧にまとめた。
なお、どの選手が「ハイブリッド型」「ストッパー型」などに当てはまるのかについては、後半で詳しく解説する。
この後は、一覧に登場した6選手それぞれについて、特徴やプレースタイルを詳しく紹介していく。
※2025-26シーズン、ルカ・ヴシュコヴィッチはハンブルガーSVにローン移籍。
ロメロやファン・デ・フェンらを徹底紹介|トッテナムの守備を支える6人のセンターバック
クリスティアン・ロメロ(背番号17)|トッテナムの守備の柱となるセンターバック
<基本情報>
名前:クリスティアン・ロメロ(Cristian Romero)
生年月日:1998年4月27日
国籍:アルゼンチン
身長:185cm
利き足:右
背番号:17
タイプ:ハイブリット型

1.アグレッシブな守備
上記のグラフはFBref.comのデータで、ロメロの直近1年間の記録を5大リーグのセンターバックと比較した数値である。
インターセプションは87と特に高く、タックルも74と平均を上回っている。
これらの数値から、クリスティアン・ロメロは前に出て守るアグレッシブなスタイルを持ち味としていることが分かる。
相手FWに素早く寄せ、強靭なフィジカルを生かして攻撃の芽を摘むプレーが彼の大きな特徴だ。
2.優れたビルドアップ能力
ロメロは守備だけでなく、ボールを前へ運ぶ力にも優れている。
昨シーズンのプレミアリーグで1,000分以上プレーした選手の中で、彼より多くプログレッシブパス(※)を記録しているのはわずか7人で、その中でセンターバックはブライトンのファン・ヘッケだけだ。
相手ゴールに直結する配球を安定して出せる点も、ロメロの大きな武器となっている。
(※)ピッチの攻撃側の3分の2で、ボールをゴールに25%以上近づけるパスこと
ミッキー・ファン・デ・フェン(背番号37)|プレミア最速スピードを誇るトッテナムのセンターバック
<基本情報>
名前:ミッキー・ファン・デ・フェン(Micky van de Ven)
生年月日:2001年04月19日
国籍:オランダ
身長:193cm
利き足:左
背番号:37
タイプ:カバーリング型
1.プレミア最速のスピードを活かしたカバー力
解説者の戸田和幸さんは「ファン・デ・フェンは背番号と同じスピードを出せる」と語っていた。
その言葉どおり、彼は背番号37にふさわしい最高時速37.12kmを記録し、2024-25シーズンのプレミアリーグ最速記録を樹立した。
これは、2位のノッティンガム・フォレストのエランガを1km以上も上回る数値である。
相手に裏を取られてもこの圧倒的なスピード活かし、一気に追いついてカバーできることがファン・デ・フェンの強みである。
2.最速センターバックの推進力
ファン・デ・フェンは後方からボールを持ち運ぶことも得意としている。
その中でも印象的なのが、2024-25シーズンのアウェイのマンチェスター・ユナイテッド戦でのプレーだ。
彼は相手からボールをインターセプトすると、そのままドリブルで相手ペナルティエリア手前まで67.13メートル運び、最後はブレナン・ジョンソンへパス。
ジョンソンがこれを決め、見事なアシストとなった。
このプレーは、ファン・デ・フェンが攻撃の起点にもなれることを示した象徴的なシーンだ。
ケビン・ダンソ(背番号4)|ゴール前を守るフィジカルモンスター
<基本情報>
名前:ケビン・ダンソ(Kevin Danso)
生年月日:1998年9月19日
国籍:オーストリア
身長:190 cm
利き足:右
背番号:4
タイプ:ストッパー型

1.空中戦の勝負強さ
ここでもFBref.comのデータを活用する。
上記のグラフから分かるように、ケビン・ダンソは空中戦で抜群の強さを発揮している。
数値は87と高水準を記録しており、相手のロングボールやクロスを的確に跳ね返すことで、守備に大きな安定感を与えている。
2.ゴール前での安定した守備
ケビン・ダンソはゴール前で体を張ったプレーも大きな特徴としている。
ブロック95、クリア91といずれも高い数値を記録し、相手のシュートを的確に遮断しつつ、危険なボールを確実に弾き返す力に優れている。
3.ロングスロー役
ダンソはチームでロングスローを任されている。
実際にPSGとのUEFAスーパーカップではその役割を担い、攻撃の起点となった。
現監督のトーマス・フランクはロングスローを積極的に戦術に組み込んでおり、ダンソが先発する試合では彼のロングスローからチャンスが生まれるかもしれない。
ラドゥ・ドラグシン(背番号3)|空中戦と対人守備に優れたルーマニアの砦
<基本情報>
名前:ラドゥ・ドラグシン(Radu Drăgușin)
生年月日:2002年2月3日
国籍:ルーマニア
身長:191cm
利き足:右
背番号:3
タイプ:ストッパー型
1.フィジカルの強さ
ドラグシンの最大の武器は、強靭なフィジカルを生かした対人守備だ。
相手FWとの1対1では簡単に押し負けず、力強いチャレンジで封じ込める。相手にとって突破は容易ではないだろう。
2.空中戦の強さ
ドラグシンは空中戦でも頼れる存在である。
守備では、強靭なフィジカルとジャンプ力でクロスをはね返し、ゴール前のピンチを未然に防ぐ。
攻撃では、セットプレーでヘディングの強さを発揮し、得点源となれるのも大きな魅力だ。
トーマス・フランク監督がセットプレーを重視するスタイルを取っていることを考えると、ドラグシンの空中戦能力はチームにとって重要な武器となる。
高井幸大(背番号25)|新たな柱となる可能性を秘めたセンターバック
<基本情報>
名前:高井 幸大(Kōta Takai)
生年月日:2004年9月4日
国籍:日本
身長:192 cm
利き足:右足
背番号:25
タイプ:ストッパー型
1.ボールを跳ね返せる力とドリブル対応力
高井幸大は「ボールを跳ね返せる力」と「ドリブル対応力」を兼ね備えたセンターバックだ。
2025年のJリーグでの空中戦勝率は63.6%と平均を上回り、ドリブル対応成功率も65%でリーグ6位。空中戦に強く、1対1の守備でも安定感のあるCBである。
2.足元の技術
高井幸大は足元の技術に優れ、後方からのビルドアップで攻撃の起点になれるセンターバックだ。
対角へのロングパスや縦パスでリズムを作り、この足元の技術はプレミアリーグでも大きな武器となるだろう。
下記記事で高井幸大のプレースタイルや特徴を詳しく解説しているので、気になる方はこちらをチェック。
ルカ・ヴシュコヴィッチ(背番号16)|トッテナムの守備の未来を担うセンターバック
<基本情報>
名前:ルカ・ヴシュコヴィッチ(Luka Vušković)
生年月日:2007年2月24日
国籍:クロアチア
身長:193 cm
利き足:右足
背番号:16
タイプ:ストッパー型
※25-26シーズンはハンブルガーSVにローン移籍
1.空中戦の強さと得点力
ルカ・ヴシュコヴィッチは、193cmの恵まれた体格を生かした空中戦の強さが最大の武器だ。
空中戦の回数・勝率ともに高い数値を残し、相手FWとの競り合いでは存在感を放つ。
さらにその強さは守備だけでなく攻撃でも発揮され、ベルギーのウェステルロー時代にはセンターバックながら7ゴールを記録している。
2.ビルドアップ力を持つCB
ヴシュコヴィッチは守備に加え、ビルドアップでも際立つ能力を持つセンターバックだ。
スルーパスや前進パスの数値は同世代でトップクラスであり、後方から攻撃を押し上げる資質を兼ね備えている。
まさに現代サッカーに求められるモダン型CBと言える存在だ。
トッテナムのセンターバックを4タイプで解説|特徴や役割について
今回、センターバックを下記4タイプに分けている。
まずは、それぞれのタイプについて簡単に解説する。

① ビルドアップ型
特徴:足元の技術が高く、後方から攻撃を組み立てる。ゲームメイク能力に長けているセンターバック。
② ストッパー型
特徴:空中戦や対人守備に強く、ゴール前で体を張る。フィジカル重視のセンターバック。
③ カバーリング型
特徴:スピードと読みで裏のスペースを消す。リスク管理能力に長けているセンターバック。
④ ハイブリッド型
特徴:ビルドアップも守備もそつなくこなす万能型。
ビルドアップ型は、足元の技術に優れ、後方から攻撃を構築するセンターバックである。
縦パスやサイドチェンジによって攻撃のリズムを作り、チームにおける起点として機能する。
ストッパー型は、空中戦や1対1の局面で強さを発揮するなど、典型的なセンターバックのことである。
相手FWの封じ込みやクロス対応など、ペナルティエリア内での決定的な局面においても力を発揮する。
カバーリング型は、俊敏さと鋭い読みを武器に、味方の背後を突かれる場面を素早くカバーするタイプである。
リスク管理に優れ、相手のチャンスを未然に防ぎ、ディフェンスに安定感をもたらす。
ハイブリッド型は、ビルドアップ能力と守備力を兼ね備えた万能型である。
攻撃では後方から試合を組み立て、守備では空中戦や1対1で強さを発揮する。
戦術に応じて役割を柔軟に変えられる点も特徴である。
トッテナムのセンターバックはどのタイプ?6選手の分類を解説
では次に、トッテナムのセンターバックの選手たちがどのタイプに当てはまるのかを見ていく。
まずは新キャプテンに就任したクリスティアン・ロメロ。
彼の持ち味は、強靭なフィジカルを生かしたアグレッシブな守備だ。
ただ、それだけではなく足元の技術も備えており、ロングボールの精度も高い。
こうした点から、ロメロはハイブリッド型に分類できるだろう。
次にミッキー・ファン・デ・フェン。
彼は最大時速37.12kmというプレミアリーグ最速のスピードを誇り、裏を突かれてもすぐに追いつけるため、守備陣に大きな安心感を与える存在だ。
まさにカバーリング型に適した選手といえる。
ケビン・ダンソは空中戦に強く、対人デュエルでも安定感を発揮する。
典型的なストッパー型といえる。
ラドゥ・ドラグシンもまた、空中戦の強さに加え、強靭なフィジカルを武器に1対1で簡単には負けない。
彼もダンソ同様、ストッパー型に分類できるだろう。
最後にルカ・ヴシュコヴィッチと高井幸大。
まだプレミアリーグでの出場経験がないため断定は難しいが、二人とも高さを武器に空中戦の勝率が高く、ボールを跳ね返す力に優れていることから、現時点ではストッパー型と判断できる。
ただし、足元の技術も高いため、それがプレミアリーグでも通用すれば、将来的にはハイブリッド型へと成長する可能性もある。
いずれにせよ若手らしい伸びしろを秘めており、今後どのように進化していくのか注目したい。
まとめ
最後に、選手を4タイプに振り分けると、下記の図のようになる。

ビルドアップ型は0人だが、ハイブリッド型のロメロは足元の技術に優れており、その役割を一部担える存在だ。
そのため、各タイプに選手が揃っており、全体としてバランスが取れているともいえる。
一方で、ストッパー型が4人と多い点も特徴的だ。
トーマス・フランクはブレントフォード時代から守備を重視し、空中戦に強いセンターバックを起用してきた。
さらにセットプレーを重視する戦術も取っているため、ストッパー型が多いことはむしろプラスに働く可能性が高い。
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