リシャルリソンのプレースタイル分析|データで分かる強みと役割

リシャルリソンは、FWの中でも評価が分かれやすい選手だ。

「どんな強みを持った選手なのか」「チームの中でどんな役割を担っているのか」
こうした疑問を持っている人もいるだろう。

本記事では、コロ・ムアニやソランケといった他のトッテナムのFW、さらにプレミアリーグ所属のFWともデータで比較しながら、リシャルリソンのプレースタイルと戦術的役割を整理していく。

あわせて、FWを4つのタイプに分類し、リシャルリソンがどのタイプに当てはまるのかも明らかにする。

数字と役割をセットで見ることで、リシャルリソンが何ができるFWで、チームから何を求められているのかが、より明確になるはずだ。

リシャルリソンについて、データをもとに深く理解したい人は、ぜひ最後まで読み進めてほしい。

リシャルリソンの基本プロフィール

まずは、リシャルリソンの基本情報とこれまでのキャリアをまとめてみた。

■ 基本情報

生年月日:1997年5月10日

身長:184cm

国籍:ブラジル

ポジション:センターフォワード

利き足:右

■ クラブ経歴

ブラジルでキャリアをスタートし、フルミネンセなどでプレー

2017年にワトフォードに移籍してプレミアリーグ初挑戦(41試合に出場 5ゴール・4アシスト)

2018年にエバートンに移籍し、主力として定着(152試合に出場 53ゴール・15アシスト)

2022年にトッテナムへ移籍

結論:リシャルリソンは王道ストライカー型

リシャルリソンは、どのような特徴を持つFWなのか。

結論から言うと、リシャルリソンはゴール前で価値を発揮する「王道ストライカー型FW」である。

ビルドアップに深く関わるタイプではなく、ペナルティエリア内での動き出しやフィニッシュに強みを持つのが特徴だ。

では、王道ストライカー型FWとはどのようなタイプなのか。

そして、なぜリシャルリソンがこのタイプに当てはまるのか。

これらについては、次の項目以降で詳しく解説していく。

リシャルリソンのプレースタイルはどのタイプ?FW4タイプで分析

FW(フォワード)には、選手によって得意な動きや役割が大きく異なる。

そこで今回は、縦軸と横軸の2つの視点からFWを4つのタイプに分けていく。

これを知ることで、試合を見たときに「あの選手はこのタイプだ」とすぐにイメージできるようになる。

FWをプレーエリアの高さ(高・低)と役割(フィニッシャー型・リンクマン型)の2軸で分類した4タイプ図。王道ストライカー型、ポストプレイヤー型、ウィング型、偽9番型を整理している。

縦軸・横軸の定義

縦軸:プレーエリアの高さ

上:前線に張って点を取ることを最優先にするFW
下:中盤に下りて攻撃の組み立てにも関わるFW

この軸は、FWが「どの位置でプレーすることが多いか」を表している。

高い位置にいる選手はゴールに近く、フィニッシュの役割が強くなる。

一方で、低い位置に下がる選手は、味方とのパス交換やチャンスづくりに関わる場面が増える。

横軸:フィニッシャー ↔ リンクマン

左(フィニッシャー):ドリブルや決定力で“自分で”ゴールを決めにいくタイプ
右(リンクマン):ポストプレーやパスで“味方を活かしながら”攻撃を作るタイプ

横軸は、FWが「どのような強みをもっているのか」を表す軸である。

フィニッシャーは“仕留める力”が武器となり、リンクマンは“つなぐ力”が武器となる。

4タイプそれぞれの特徴

ここからは、4つのタイプをそれぞれ分かりやすく解説していく。

 ① 王道ストライカー型

● どんな選手?

前線に張り、動き出しやシュート技術が高く、決定力が高いのが特徴。

● 役割

・ペナルティエリア内で勝負

・一瞬の動きでDFの裏を取る

・チャンスが来たら確実に仕留める

● イメージ例

「点を取るために存在するFW」
ハーランド、若い頃のケインのようなタイプ。

② ポストプレイヤー型

● どんな選手?

前線で相手DFを背負いながらボールを受けて、味方を活かすタイプ。
体の強さとキープ力が武器で、攻撃の“つなぎ役”になれるFW。

● 役割

・背負ってボールを収め、味方へパス

・ゴール前でターゲットにもなる

・相手CBと競り合うことで攻撃の軸になる

● イメージ例

前線の壁になってチームを前に進めるFW
ジルー、ルカクのようなタイプ

③ 偽9番型

● どんな選手?

FWなのに中盤へ下りて、パスで攻撃を組み立てるタイプ。
司令塔のような働きをするFW で、周りの選手を生かすのがとても上手い。

● 役割

・中盤でボールを受けて攻撃を“スタート”させる

・味方の動きを引き出す

・ときには自分でフィニッシュに入る

● イメージ例

「FWだけどゲームメイカー」
バルサ時代のメッシ、フィルミーノのようなタイプ。

④ ウィング型

● どんな選手?

サイドの広いスペースを使い、スピードやドリブルで相手を抜いてチャンスを作れるのが特徴。
裏への抜け出しも得意で、カウンターの主役になれる。

● 役割

・サイドからドリブルで突破

・裏へ走り込んでゴールを狙う

・1対1の局面をつくり、チャンスを生み出す

● イメージ例

「スピードとドリブルで試合を決める選手」
ソン、サラーのようなタイプ。

リシャルリソンが王道ストライカー型に入る理由

ここまで、FWを4タイプに分け、それぞれの役割やプレーの特徴を整理してきた。

では、なぜリシャルリソンは「王道ストライカー型」に分類できるのか。

結論から言うと、理由は大きく2つある。

・ゴール前での決定力が高いこと

・ボックス内でのタッチ数が多く、ゴール前で良いポジションを取れていること

これらは、王道ストライカーに求められる重要な要素だ。

次の項目では、これら2つのポイントに注目しながら、リシャルリソンの強みとプレースタイルを詳しく解説していく。

データで見るリシャルリソンの強みとプレースタイル

ここからは、DataMB(https://datamb.football/)のデータを参考にして分析していく。

下記の図は、プレミアリーグ得点ランキング上位に名を連ねるイゴーリ・チアゴ、ジャン=フィリップ・マテタ、ウーゴ・エキティケ、そしてリシャルリソンの4人を比較したものだ。
※2025年12月14日時点のデータ

この比較データをもとに、リシャルリソンのプレースタイルや強みを整理していく。

リシャルリソンとプレミアリーグFW(イゴール・チアゴ、ジャン=フィリップ・マテタ、ウーゴ・エキティケ)を、NPG、決定率、ボックス内タッチ数などの指標で比較したデータ図。

ゴールに直結する決定力の高さ

NPG:86.2

Goal conversion%:84.0

リシャルリソンの強みは、PKに頼らず、来たチャンスをゴールに変えられる決定力である。

NPG(PKを除いたゴール数)とGoal conversion(ゴール決定率)の両方が高く、これは決定力のあるFWであることを示している。

「決定力が低い」というイメージを持たれがちな選手ですが、データを見ると実際はその逆で、少ない機会でも結果を残せるタイプである。

ゴール前で勝負し続けるポジショニング力

Touches in box:62.3

Touches in box(ボックス内タッチ数)は 62.3と、今回比較したFWの中では2番目に高い数値であった。

これはリシャルリソンが

・裏への抜け出し
・ニアへの走り込み
・こぼれ球への素早い反応

といった動きを繰り返し、自らゴール前でプレーする回数を増やしていることを示している。

この数値の高さは、リシャルリソンが常にゴールを意識し、点を取るためのポジショニングを取り続けているFWである証拠と言える。

味方も活かせるフィニッシャー

xA(アシスト期待値):57.8

リシャルリソンは、ゴールを決めるだけでなく、味方の得点チャンスも生み出せるFWである。

xAとは、「そのパスがどれくらいゴールになりやすかったか」を数字で表した指標だ。

この数値が高いということは、ただゴール前で待つだけではなく、ゴールに直結しやすい場面で味方を使う判断ができていることを意味している。

このxAの高さから、リシャルリソンは「点を取るフィニッシャーでありながら、周囲も活かせるFW」であることが分かる。

リシャルリソンの課題と弱点

強みが明確である一方で、リシャルリソンにはいくつかの課題も存在する。

次に、データをもとに彼の弱点や改善点について整理していく。

リシャルリソンとプレミアリーグFW3選手を比較し、npxG(PKを除いた期待得点)と空中戦勝率(Aerial%)の低さから、プレースタイル上の課題を示したデータ比較図。

自力で決定機を量産するタイプではない

npxG(PKを除いたゴール期待値):41.8

これは、今回比較したFWの中ではマテタやイゴール・チアゴよりも低い数値だ。

この数字から分かるのは、

・個人突破で何度もシュートまで持ち込む

・自分で局面を打開してチャンスを量産する

といったタイプではないことが分かる。

つまり、自分で多くの決定機をあまり作れず、周囲からの供給が少ないとゴール数も伸びにくいFWだと言える。

空中戦はあまり得意ではない

Aerial%(空中戦勝率) 35.1

今回比較したFWの中では、最も低い数値となっている。

リシャルリソンは体を張るプレーが多いため、空中戦にも強いイメージを持たれがちだが、データを見ると高さで安定して勝ち続けるタイプではないことが分かる。

ロングボールの競り合いでは、ポストプレイヤーほどの安定感は出せないという課題がある。

データが示すリシャルリソンの役割|ゴール前で攻撃を完結させるフィニッシャー

最後に、リシャルリソンをトッテナムの他のFW(コロ・ムアニ、ソランケ)とデータで比較しながら、彼がチームの中でどのような役割を担っているのかを整理していく。※ソランケは2024-25のデータ

リシャルリソン、コロ・ムアニ、ソランケの攻撃データを比較し、NPG、ゴール決定率、ボックス内タッチ数などから、トッテナムにおけるリシャルリソンの役割を示したデータ比較図。

結論として、リシャルリソンのトッテナムでの役割は、ゴール前で攻撃を完結させるフィニッシャーである。

データを見ると、リシャルリソンはNPG(PKを除いたゴール数)とGoal conversion(ゴール決定率)が、今回比較した3選手の中で最も高い。

この数字の組み合わせは、彼が自分で多くのチャンスを作るFWではなく、周囲が作ったチャンスを確実にゴールへ変えるFWであることを示している。

さらに、Touches in box(ボックス内タッチ数)も3人の中で最も高い。

これは、裏への抜け出しやニアへの走り込み、こぼれ球への反応を繰り返し、常にゴール前で勝負する位置に入り続けているFWであることの証拠だ。

これらのデータを総合すると、リシャルリソンは攻撃を組み立てる役や前線の基準点になる役ではなく、周囲が作った攻撃の最後に入り、ゴールを奪うための存在である。

まとめ

最後に、ここまでの内容を整理する。

リシャルリソンは、ゴール前でのポジショニングや決定力に優れ、周囲が作ったチャンスをゴールへと変える「王道ストライカー型FW」であることが、データからも明らかになった。

そのため、彼の評価はゴール前で攻撃を完結させる役割に特化したフィニッシャーとして捉えることで、より正確になる。

トッテナムにおいても、チームが作った流れを最後にゴールへ結びつける存在として起用されたとき、力を発揮するFWだと言えるだろう。

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