ソン・フンミンのプレースタイルをデータで読み解く|“速さだけではない”得点力の正体

アジア人として初めてプレミアリーグ得点王に輝いたソン・フンミン。
トッテナムでは長年にわたり、攻撃の中心としてチームを支え続けてきた。

では、なぜ彼はこれほどまでにゴールを量産し続けることができたのだろうか。

スピードを武器にするウィンガー――そう語られることは多いが、それだけでプレミアリーグ得点王という結果を説明するのは難しい。実際、速さを持つ選手は他にも数多く存在する。

では、ソン・フンミンの得点力の正体はどこにあるのか。
本記事では、「速いから点が取れる」という表面的な印象を一度脇に置き、データと戦術の視点から、得点が生まれる構造を紐解いていく。

両足の精度、ゴール前での決定力、そしてハリー・ケインとの役割分担。
この記事を読み終えたとき、ソン・フンミンがなぜゴールを量産できたのかを、感覚ではなく理屈で理解できるはずだ。

ソン・フンミンの基本情報と経歴、得点成績

まずは、ソン・フンミンの基本情報とこれまでのキャリア、得点成績をまとめてみた。

■ 基本情報

生年月日: 1992年7月8日

身長:184cm

国籍:韓国

ポジション:ウィンガー

利き足:右

■ クラブ経歴

・ドイツに渡り、ハンブルガーSVの下部組織で育成され、2010年にトップチームでプロデビュー。

・若くしてブンデスリーガで結果を残すと、2013年にバイエル・レバークーゼンへ移籍し、得点力の高いアタッカーとして評価を高めた。

・2015年、トッテナム・ホットスパーに加入。当初は適応に苦しむ時期もあったが、徐々に主力へ定着。2021-22シーズンにはアジア人として初となるプレミアリーグ得点王を獲得した。

・2025年にはヨーロッパリーグ制覇を果たし、トッテナムで初の主要タイトルを獲得。

その翌シーズンの夏、長年在籍したクラブを離れ、ロサンゼルスFCへ移籍した。

■ 成績

ソン・フンミンのクラブ別成績一覧|ハンブルクSV、レバークーゼン、トッテナム、ロサンゼルスFCでの試合数・ゴール数・アシスト数
各所属クラブでの試合数・ゴール数・アシスト数(2026年1月10日時点)
ソン・フンミンのトッテナム在籍シーズン別成績|2015-16から2024-25までの試合数・ゴール数・アシスト数と通算成績
トッテナム時代の成績
ソン・フンミンのプレミアリーグ・シーズン別成績|2015-16から2024-25までの試合数・ゴール数・アシスト数と通算成績
プレミアリーグの成績

データで分かる結論|ソン・フンミンが点を取り続けた3つの理由

ソン・フンミンはなぜ得点を量産できたのか。

結論から言えば、理由は大きく3つある。

・限られたチャンスを仕留める決定力

・両足の精度の高さ

・ハリー・ケインとのコンビネーション

次の項目からデータを使いながら詳しく説明していく。

データが示すソン・フンミンのプレースタイル|得点力を支える決定力と両足の精度の高さ

Non-Penalty Goalsが示す決定力

ソン・フンミンのプレースタイルを示す決定力データ。Non-Penalty Goalsが1.01、パーセンタイル99を記録し、PKに頼らない得点力の高さが分かる指標
参照元:https://fbref.com/en/

ソン・フンミンの得点力の高さは、Non-Penalty Goals(ノン・ペナルティ・ゴール)というデータを見ると分かりやすい。

Non-Penalty Goalsとは、PKを除いたゴール数を90分あたりで表した指標で、「試合の流れの中で、どれだけ点を取れているか」を示している。

ソン・フンミンのNon-Penalty Goalsは1.01。

これは90分プレーすると、PKなしで1点以上取っている計算になり、同じポジションの選手と比べても非常に高い数値だ。

この数字が示しているのは、「チームからPKを任されて得点を重ねている選手」ではなく、自分でチャンスをものにしてゴールを決めている選手だということだ。

スピードだけでなく、ゴール前で外さない技術と判断力を持っていることが、ソン・フンミンが長年にわたって得点を量産できている理由の一つなのである。

左右どちらでも決め切れる完成度

ソン・フンミンが長年にわたって高い得点力を維持してきたもう一つの理由が、左右どちらの足でもゴールを決められる精度の高さにある。

プレミアリーグ通算127ゴールの内訳を見ると、右足で74ゴール、左足でも49ゴール(残りはPKなど)を記録しており、特定の足に頼らず得点できていることが分かる。

この特徴があることで、相手DFやGKは「どちらの足でシュートが来るのか」を事前に予測しづらくなる。そのため守備側の反応が一瞬遅れやすく、ソンは余計なタッチを入れずにシュートを打てる状況を作りやすい。

結果として、ワンタッチや少ない動作でもゴールを狙えるようになり、得点の確率は自然と高まっていく。

どんな体勢でも迷わずシュートを選択できる完成度の高さが、安定したゴール量産を支えていたと言える。

ハリー・ケインとの連携が生んだ得点力|ソン・フンミンの戦術的プレースタイル

ソン・フンミンの得点力を語る上で欠かせないのが、ハリー・ケインとの戦術的関係性だ。

モウリーニョ体制下でケインは、9番と10番を融合した存在となり、ビルドアップ時には中盤まで下りて起点を担った。

これにより相手CBが引き出され、背後のスペースが生まれる。
ソンはその空間へタイミング良く走り込み、ケインは振り向きざまに最短距離でパスを供給する。

「受けに来るCF」と「先に走るWG」

この関係性が、相手ディフェンラインのズレを生み出し、ソン・フンミンの決定力を最大限に引き出していた。

ハリー・ケインとソン・フンミンの戦術的連携を示した配置図。ケインが中盤に下りて起点となり、ソン・フンミンが背後へ抜け出す動きが分かる戦術イメージ
ハリー・ケインとのプレミアリーグでのゴールコンビネーションの記録(37)を更新

まとめ

ソン・フンミンの得点力は、次の3つの要素が噛み合った結果である。

  1. Non-Penalty Goalsの数値が示す高い決定力
  2. 左右どちらの足でも迷わずシュートを打てるフィニッシュ精度の高さ
  3. ハリー・ケインとの役割分担による戦術的な最適化

そして、ケインが退団した後も得点を取り続けることができたのは、
①Non-Penalty Goalsが示す決定力と、②両足で迷わず打てるフィニッシュ精度の高さ個の能力が確立されていたからだろう。


戦術的な相棒が変わっても、自らゴールを生み出せる再現性こそが、ソン・フンミンを特別な存在にしている。

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