【戦術解説】元横浜Fマリノス監督のポステコグルーの戦術について

横浜F・マリノスをJリーグ優勝に導いたアンジ・ポステコグルー。

2023年6月にトッテナムの監督に就任し、就任最初の2カ月で月間最優秀監督賞を連続で受賞するなど、活躍を見せている。

今回はアンジ・ポステコグルーの戦術についてまとめてみた。

アンジ・ポステコグルーの戦術

アンジ・ポステコグルーの戦術を一言で言うと、「ハイリスク・ハイリターンの戦術」と言えるだろう。

そして、彼の戦術の特徴は下記2点である。

  1. 偽サイドバック
  2. ハイプレス

まずは、偽サイドバックとハイプレスについて詳しく解説していく。

特徴① 偽サイドバック

偽サイドバックとは、ビルドアップの時にサイドバックがあえて内側に入り、中盤の選手のような役割を担うことを指す。

トッテナムでは、両サイドバックがハーフスペースに入り、2-3-5のような形になることが多い。

偽サイドバックの主なメリットは下記2点である。

(1)中盤で数的有利な状況を作ることができる。

(2)ウィングを活かしやすい。

メリット(1) 中盤で数的有利な状況を作ることができる

中盤の人数が増えることで、数的有利な状況を作ることができるため、ショートパスがつなぎやすく、試合をコントロールしやすくなる。

またボールが相手に奪われても、数的有利のためボールを奪いやすいのも、偽サイドバックのメリットである。

さらに、中盤に選手が密集しているため、カウンターで中央が使われにくくなる。

メリット(2) ウィングを活かしやすい

数的有利な状況を作らせないために、相手チームも中央に人数をかけた場合、ウィングの足元に簡単にボールがつなぎやすくなる。

つまり、高い位置で1vs1の状況が作りやすいため、ドリブル力のあるウィングを配置することで、そこからゴールへの期待値が高くなる。

※グアルディオラはバイエルン時代にリベリーとロッベン、マンチェスターシティ時代にスターリングとサネをウィングに配置し、そこから崩して得点を奪うことを狙っていた。

特徴② ハイプレス

アンジ・ポステコグルーの戦術の特徴2つ目は、ボールを失っても、ハイプレスで即時奪回を目指すことである。

偽サイドバックによって、中盤と前線に人数を割いているので、複数人でプレスをかけてボールを奪いにいくことができる。

相手がゴールキーパーからビルドアップをする時は、4-4-2にセットしてプレスをかけにいく。

相手の中盤選手にしっかりマークし、ボールを外側へ誘導する。

相手をあえて狭いスペースでプレーさせることで、ボールが奪いやすくなり、カウンター攻撃でゴールを狙いに行く。

ファイナルサードでの動き

偽サイドバックのメリットの所で、ウィングにパスが入りやすくなると言ったが、ウィングがボールを持った後どのように敵陣を崩すのかを、ここで解説していきたい。

ウィングにパスが入ったら、近くにいる選手が相手センターバックとサイドバックの間に走り込む。

これによってウィングは、「①自分でドリブルしてボールを運ぶ」「②走り込んだ選手へパスを出す」の2つ選択肢ができる。

さらに、同サイドにいるもう一人の選手が、ウィングが横にパスを出せるように、コースを作る。

このように複数の選択肢があるため、相手ディフェンダーに迷いやズレが生じて、相手ブロックに穴をあけることができる。

また、ウィングが中へドリブルしてボールを運んだ場合は、逆サイドの味方選手2人がゴールに向かって走り込み、ウィングがクロスボールを供給する。

この他にセンターフォワードへバスを出し、センターフォワードがポストプレーでタメを作り、そこから相手ディフェンダーの裏へ走り込んだ選手へスルーバスを出してゴールを狙うパターンもある。

弱点

ここまで、アンジ・ポステコグルーの戦術の特徴とファイナルサードでの動きについて話してきたが、最後に弱点についてふれたい。

アンジ・ポステコグルーの弱点は、カウンターのリスクが高いことだ。

偽サイドバックの所で、中盤で数的有利な状況を作れるので、中央からのカウンターのリスクは少ないと言ったが、裏を返せば両サイドにはスペースが大きく空いていることになる。

そのため、サイドのスペースを使われてカウンター攻撃をされた場合、失点のリスクが高くなる。

ポステコグルーの戦術では、両サイドバックが攻撃に参加していることもあるため、センターバック2人で守備をすることになり、失点とは隣り合わせの状態になっている。

※トッテナムでは、強力な対人守備が強みのロメロと、プレミア屈指のスピードがあるファン・デ・フェンがいるため、なんとかしのげている。

まとめ

ここまで、ポステコグルーの戦術について解説してきた。

偽サイドバックによって中盤で数的有利を作り、ファイナルサードでは複数の選択肢を作ることで、相手ディフェンスに迷いやズレを生じさせて、ゴールの可能性を上げる。

その一方で、両サイドには大きなスペースが空いているため、カウンターから失点するリスクがある。

最初にも言ったように、ハイリスク・ハイリターンがポステコグルーの戦術の特徴である。

ゴールのドキドキ感と、失点のハラハラ感の両方を味わうことができるので、ぜひ一度ポステコグルーのサッカーを観てほしい。

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