「史上最弱のアッズーリ」
不名誉なレッテルを貼られていたEURO2016のイタリア代表。
ペッレとエデルは代表での実績がほとんどなく、マルキージオとベラッティ、モントリーボは怪我で代表メンバーから落選した。
戦力だけを見れば、前評判は悲観的なものが多くあった。
しかし初戦で優勝候補のベルギーに勝利。グループステージを1位で突破して、ベスト16ではスペインから白星をあげる。
準々決勝でドイツにPK戦で敗れてしまったものの、良い意味で期待を裏切ってくれた。
コンテはどのような戦術をイタリア代表に浸透させたのだろうか?
今回はイタリア代表時代のコンテの戦術について書いてみた。
特徴
基本フォーメーションは「3-5-2」。
守備時は両WBが最終ラインまで下がって「5-3-2」に変化する。
攻撃時は両WBが前線まであがって「3-3-4」になる。
状況に合わせて変化して対応できることが特徴である。
守備
基本はキエッリーニとボヌッチ、バルザーリの3バックを採用。
ただし状況に合わせて4バックや5バックに変化して、試合中常に数的優位を作ることを意識していた。
例えば相手が3トップの場合は、ボールから遠いサイドにいるWBが下りて4バックを形成する。
4-2-3-1の前4人でプレスをかけてきた時は、両WBが下りて5バックになる。
2トップは真ん中を閉めて、相手MF(例えばクロースやブスケッツ)にビルドアップに参加させないようにした。
そしてボールがサイドにいくように誘導した。
ボールを奪える確率が高くなり、カウンターからゴールを決めやすくなるからだ。
また相手MFを抑えることで、サイドチェンジがロングボールかCB経由になるので、スライドがより簡単に行えるようになる。
サイドにボールが出たら、中盤もしくはWBがプレスをかけてボールを奪いに行く。
<ポイント>
- 基本は3バック。状況に応じてWBが下りて4バックや5バックに変化する。
- 2トップは中央を閉めてボールをサイドに押し出す。チャンスがあればサイドでボールを奪い、カウンターからゴールを狙う。
攻撃
先ほど述べたように、両WBが前線まであがって4トップになる。
相手の4バックと4対4の関係を作り、ディフェンダーにとって不利な状況にするためだ。
この状況を作った上でゴールを目指す。
例えばベルギー戦のゴールを振り返ってみる。
2トップ+2WBで相手4人のディフェンダーをくぎ付けにする。
そしてボヌッチが、2列目から最終ラインの裏へ走り込んだジャッケリーニに浮き球のパスを送ったことで、先制することができた。
4対4の数的同数の状況で中盤の選手が前線にあがることで、攻撃に厚みを持たせる。
これが当時のイタリア代表の特徴であった。
また状況に応じて積極的にプレスをかけてボールを奪い、素早く攻撃を仕掛けていた。
WBが高いポジションをとり、MFが縦への素早いパスを出すことで、相手の守備陣形が整う前に攻撃を完遂させる。
中盤の空洞化について
当時のイタリア代表は後ろで丁寧にパスをつなぎ、最終ラインからの1本の縦パスで攻撃のスイッチが入り、一気にゴールを狙っていた。
その時に「あえて」中盤のスペースを空にして、前線にパスを送るためのコースを作っていた。
ここでは中盤の空洞化についてより詳しく見ていく。
ビルドアップの時、後方でのパス回しは3CB+アンカーのデロッシが行う。
残りの中盤の2人は基本的にパス回しには参加しない。両WBは2トップと同じ高さの所まであがっている。
これを図に表すと下記のようになる。
前線に6人、後方に4人と分断している。
これがコンテの狙いである。相手も同様に前と後ろで分断し、間延びしている状況になるからだ。
さらにコンテのサッカーはサイドからビルドアップを始める。
そのためインサイドハーフは中に絞らず、サイドにポジションをとる。これにより相手選手がマークにつくために、必然的にサイドに移動する。
図に表すと下記のようになる。(イメージしやすいように極端にしています)
中盤に選手がおらず、最終ラインから前線に簡単にロングパスを放り込むことができる。
そして前線には194cmのペッレがいる。
さらに4対4の数的同数の状況になっているため、相手ディフェンダーはリスクを多く冒すことができない。
中盤の空洞化によって前線にパスを出しやすく、数的同数の状況によってペッレがボールをキープしやすくなっていた。
(ポイント)
- 両WBが2トップと同じ高さまであがって4トップになる。→相手4バックと数的同数の状況を作る。
- あえて中盤を空にする。→最終ラインから長身のペッレにロングパスを出しやすいようにする。
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