【戦術解説】アントニオ・コンテ戦術史 インテル編

コンテ戦術史、今回はインテル編。

アントニオ・コンテがインテルでどのような戦術を使っていたのかを振り返る。

キーマンはルカクとブロゾビッチ

基本フォーメーション

インテル時代のコンテは主に「3-5-2」を使っていた。

このシステムにおいて、特に重要なのは下記の2点。

  1. FWにポストプレイヤーがいること(ルカク)
  2. 中盤にゲームメイクを行うプレイヤーがいること(ブロゾビッチ)

「ルカク」は身長191cm、体重90kg以上ある、重戦車タイプのFW。

屈強な体をいかし、前線でボールをおさめることができる。

さらに自分で前を向いて、ドリブルでボールを運べる。

スピードも兼ね備えているため、相手DFを置き去りにすることもある。

そしてルカクに高精度のロングパスを出すのが、攻撃の司令塔である「ブロゾビッチ」。

彼は中盤の底で味方からボールをもらい、攻撃を組み立てる。

特にルカクのことを見ていて、「ブロゾビッチからルカクへのロングパス」が攻撃のスイッチになる。

また運動量が豊富なことも、ブロゾビッチの魅力の1つ(1試合の平均走行距離が11.9kmでリーグ1位)。

ピッチの色んな場所でボールを引き出してゲームメイクを行う。

ブロゾビッチへのマークが厳しい場合には、彼の後ろにいる「デフライ」がポイントになる。

ロングパスの精度が高いデフライがルカクへパスを出して、一気にゴールまで向かう。

攻撃面

ルカクにボールが入ったら、相棒のラウタロ・マルティネスとのコンビネーションでゴールを狙う(ルカクがポスト、ラウタロがストライカーの役割)。

相手DFがルカクとラウタロ・マルティネスをマークしている場合は両WBを使う。

特に右サイドには超攻撃的WBのハキミがいる。そして、そこにバレッラがサポートに入る。

相手DFがバレッラにつられた場合は、ハキミがカットインしてシュートを打つ、もしくはルカクかラウタロ・マルティネスへクロスをあげる。

もう1つは追い越したバレッラへパスを出すパターン。

ポケットへ侵入したバレッラがクロスをあげ、ルカクやラウタロ・マルティネス、ビダル、ヤングがクロスボールに合わせてゴールを狙う。

守備面

守備時は「5-3-2」のブロックを形成する。

ディフェンス面での特徴はさまざまな形を用意していることだ。

例えば相手SBがボールを持った時、下記の2パターンを用意している。

  1. インサイドハーフ(特にビダルかバレッラ)が出ていき、残りの中盤2選手がスライドして空いたスペースをうめる。
  2. WBが出ていき、DFがスライドして空いたスペースをうめる。

①の場合、どうしても中盤の運動量が増えてしまう。

ハードワーカーなビダル、運動量が豊富なバレッラがいるので、このシステムは機能するが、守備に無理が出ることがある。

そこで②を用意して状況に応じて使い分けることで、守備面で無理が出ないようにしている。

優勝へのラストピースはエリクセン

優勝を目指して突き進むコンテインテル。

しかし、2シーズン目に1つの問題点が出てくる。

それは「3CB+ブロゾビッチのビルドアップ」が相手に研究され、ブロゾビッチの負担が増加していることだ。

コンテは打開策を見つけないといけなくなった。

そしてその打開策が「エリクセンとブロゾビッチの併用」だ。

ビダルのポジションに入ったエリクセンが、ブロゾビッチと縦や横の関係を作る。

それによって相手からすると、どこで、誰につくのか対応がしにくくなった。

またエリクセンがいることで、攻撃のポイントが増えた。

エリクセンの強みは、両足から高精度のパスや決定的なスルーパスを出せること。

そのため攻撃の司令塔のブロゾビッチがマークされていても、エリクセンがゲームを組み立てることができる。

19-20シーズンの冬にトッテナムからインテルに移籍したエリクセン。

最初はイタリアの文化に馴染めないこともあって、出場時間を増やすことに苦戦していた。

しかし20-21シーズンの後半からはスタメンで出る機会が増え、チームの勝利に貢献する。

一時期は退団の噂もあったが、エリクセンがインテル11年ぶりのスクデット獲得のラストピースになったのは間違いないだろう。

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