ファビオ・パラティチとは?トッテナムの移籍・補強戦略を担う人物の正体

2025年10月15日、トッテナム・ホットスパーはファビオ・パラティチのクラブ復帰と、スポーツディレクター就任を正式に発表した。

これにより、トッテナムのスポーツ部門は、ヨハン・ランゲとパラティチによる二頭体制へと移行することとなった。

それぞれの役割は以下の通り明確に分担されている。

ヨハン・ランゲ:アカデミーの強化、スカウティング、パフォーマンス分析など、選手育成とクラブの長期的な構造改革を担当。

ファビオ・パラティチ:移籍市場における選手の獲得および売却など、クラブの編成や即戦力補強を担当。

本記事では、復帰したパラティチに焦点を当て解説していく。

これを読むことで、パラティチがどのような手腕を持ち、今後トッテナムでどのような影響をもたらす可能性があるのかが明らかになるだろう。

経歴

トッテナムの移籍・補強の責任者に就任したファビオ・パラティチの経歴をまとめた表

ファビオ・パラティチはピアチェンツァで選手としてのキャリアをスタートさせ、14年間セリエB,セリエCのクラブでプレーした。

その後、2004年にサンプドリアのスカウティングマネージャーに就任。

そして2010年の夏にテクニカル・エリア・コーディネーターとしてユベントスに加し、2018年にはユベントスの補強責任者に就任するなど、着実にクラブ内でステップアップをしていった。ユベントスでの11年間で19のトロフィーを獲得した。

そして、2021年7月にマネージング・ディレクターとしてトッテナムに加入。しかし、約2年後にトッテナムを去ることになってしまう。

ユベントス時代の財務不正疑惑に関与したとして、30か月のイタリア国内外での活動停止処分が与えられてしまう。

トッテナム退任後は、コンサルタントとしてトッテナムの補強戦略をサポートしていたと言われているが、2025年の10月にスポーツディレクターとしてトッテナムに復帰。

今後はヨハン・ランゲとともに、トッテナムを支えることになった。

パラティチは24時間働いている?

「彼は信じられないほどの働き者だと言えるでしょう」。

そのように語るのは、2012年から2017年までユベントスのスカウト部長としてパラティチのそばで働いていたハビエル・リバルタだ。

「彼がいつ寝ているのか分からない。1日24時間働いていると言っても過言ではない。」

「ファビオは夜中でも、コパ・リベルタドーレスからコパ・アメリカまで、あらゆる試合を見る。彼はどんな試合でも見るんです。普通、スポーツディレクターやフットボールディレクターになると、若い選手をチェックする時間はない。しかし彼は常に試合を見続け、常に代理人に電話をかけ、世界中のすべての選手について最新情報を得ているんです。」

携帯電話を持っていない姿を見ることはほとんどなく、携帯電話を操作しながら、あるいはイヤフォンをして試合中でも誰かとおしゃべりをしながら、彼はいつも働いている。

(この姿は多くのスパーズファンが見たことあるだろう。)

ユベントス時代の獲得選手

ここでは、ファビオ・パラティチがユベントス在任中に手がけた代表的な補強例を紹介する。

アンドレア・バルザーリ

2011年1月、パラティチはヴォルフスブルクからアンドレア・バルザーリをわずか30万ユーロという破格で獲得した。

その後、バルザーリはジョルジョ・キエッリーニ、レオナルド・ボヌッチとともに鉄壁の3バックを形成。長年にわたりユベントスの守備陣を支えた。

パラティチは退団会見で、「もし私が一人選ぶとしたら、バルザーリだ」と語り、次のように称賛している。

「彼は長年にわたって私たちと共に過ごし、多くの人から過小評価されていた。彼がどれだけ重要で、このクラブに何を与えてくれたかは、誰もが知っていることだ」

アルトゥーロ・ビダル

パラティチは、ビダルがU-17の頃から追っていたと語っている。

2011年に、レバークーゼンから24歳のビダルを1050万ユーロで獲得。

在籍4年間で171試合に出場し、48ゴール25アシストという驚異的な数字を残した。

彼の活躍は数字だけにとどまらず、ユベントスの4連覇に貢献。さらに2013年にはクラブ年間最優秀選手賞を受賞している。

ポール・ポグバ

2012年、マンチェスター・ユナイテッドを契約満了で退団した19歳のポール・ポグバを、パラティチは移籍金0円でユベントスに迎え入れた。

その後、ポグバはセリエAでの4連覇、コッパ・イタリア2度の優勝を果たし、世界最高のミッドフィルダーの一人に成長した。

2016年には、当時の世界移籍金記録(約1億500万ユーロ)で古巣マンチェスター・ユナイテッドに売却し、莫大な利益を得ることになった。

アンドレア・ピルロ

2011年、ACミランを退団した当時32歳のアンドレア・ピルロに目をつけたのもパラティチだった。

多くの人が「もう終わった選手」と見なす中、パラティチは彼にチャンスを与えることを決断。

ピルロはユベントスで164試合に出場し、セリエA4連覇に貢献。2015年にはチャンピオンズリーグ決勝にも出場し、その復活劇はクラブにとっても大きな成功例となった。

パウロ・ディバラ

2015年、ユベントスはセリエAでわずか21ゴールの実績しかなかったパウロ・ディバラに対して、3200万ユーロを支払うことを決断。

パラティチは後に、「私のキャリアの中で最もリスクの高い契約の一つだった」と振り返っている。

しかしそのリスクは報われ、ディバラはユベントスで293試合に出場し、115ゴールを記録。クラブの5連覇に貢献し、歴史にその名を刻むこととなった。

トッテナム時代の獲得選手と特徴について

次に、パラティチがトッテナム在籍時に獲得した主な選手と特徴を見ていく。

トッテナムの移籍・補強の責任者に就任したファビオ・パラティチがトッテナム時代に獲得した選手一覧

セリエAとの太いパイプ

上記の表は、彼がトッテナム在籍時に獲得した選手一覧である。

パラティチの補強においてまず目を引くのは、セリエAからの獲得が多いという点である。

実際、彼が関与した16人の獲得選手のうち、6人がセリエAからの移籍組であった。これは、彼がイタリア時代に築いてきた人脈や移籍交渉の経験が、トッテナムでの補強にも反映されていると考えられる。

若手の発掘にも注力

パラティチは、即戦力だけでなく将来性のある若手選手の発掘にも力を入れていた。

以下の選手がその代表例である:

パぺ・マタル・サール

ブライアン・ヒル(※退団済)

デスティニー・ウドジェ

ジェド・スペンス

このうち、ヒルは期待に応えられずクラブを離れたが、他の3選手は現在もトッテナムでスタメンとして活躍しており、そのスカウティング眼の確かさがうかがえる。

EL制覇メンバーの中核に

トッテナムEL優勝時のスタメン図。ファビオ・パラティチが獲得した選手を赤文字で表示。彼の補強戦略がチーム成功に直結していることを示す。
EL優勝時のスタメン。赤字がパラティチが獲得した選手

パラティチの補強は単なる数合わせではなく、確かな成果にもつながっている。

2024-25シーズン、トッテナムはヨーロッパリーグ優勝という大きなタイトルを獲得したが、その試合のスターティングメンバー11人のうち、実に7名がパラティチ在任時に獲得された選手たちだった。

この事実は、彼の補強がチームの競争力を実際に高めたことを裏付けており、今後どのような選手を連れてくるのかにも注目が集まるだろう。

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