デ・ゼルビの戦術とは?フォーメーションやビルドアップの仕組みを図解で解説

トッテナムの監督に就任したロベルト・デ・ゼルビ。

「どのような戦術を用いる監督なのか」
「トッテナムのサッカーはどう変わるのか」
と気になっている方も多いのではないだろうか。

そこで本記事では、デ・ゼルビの戦術の基本構造や特徴、そして弱点について分かりやすく解説する。
さらに、デ・ゼルビがトッテナムの監督に就任したことで、チームがどのように変化するのかについても、データをもとに考察していく。

この記事を読むことで、デ・ゼルビの戦術の仕組みと、トッテナムが今後どのようなサッカーを目指すのかが理解できるはずだ。

【結論】ロベルト・デ・ゼルビ戦術のポイント3つ

では、ここからデ・ゼルビの戦術について解説していく。

まず押さえておきたいポイントは、次の3つだ。

  • ポゼッションを重視すること
  • 自陣ゴール付近から相手を引き出すビルドアップ
  • 数的優位を作ること

詳しい内容はこの後で説明するが、デ・ゼルビのサッカーを理解するうえで、この3点が大きな特徴となる。まずはこのポイントを意識しておいてほしい。

①:ポゼッション重視

デ・ゼルビ監督は、ゴールキーパーから短いパスでビルドアップを開始するポゼッション型のサッカーを好む監督である。
ボール保持を通して相手を動かし、スペースを作りながら前進していくスタイルが特徴だ。

実際に彼が率いたチームのデータを見ると、その特徴がよく表れている。

デ・ゼルビのポゼッション実績

19/20 セリエA:3位(サッスオーロ)

20/21 セリエA:1位(サッスオーロ)

21/22 ウクライナリーグ:1位(シャフタール)

このように、デ・ゼルビのチームは常にリーグでもトップクラスのボール保持率を記録している。

②:自陣ゴール付近から相手を引き出すビルドアップ

デ・ゼルビの戦術の特徴の2つ目は、自陣ゴール付近から相手を引き出すビルドアップである。

多くのチームは、自陣の危険なエリアではロングボールを使ってプレッシャーを回避することが多い。
しかし、デ・ゼルビのチームは自陣ゴール付近でもボールを保持することを恐れない。

ゴールキーパーとディフェンダーの間でパスを回しながら相手を引きつけ、プレスを誘発する。
そして、そのプレスによって生まれたスペースを利用して前進する。

この相手のプレスを利用してスペースを作り出すビルドアップが、デ・ゼルビのサッカーの基本構造となっている。

ビルドアップ時の配置

では、ここからデ・ゼルビの基本構造について詳しく見ていこう。

ロベルト・デ・ゼルビの戦術フォーメーション|1-4-2-2-2によるビルドアップ構造図
1-4-2-2-2のフォーメーション図

低い位置からビルドアップを行う際、デ・ゼルビのチームは「1-4-2-2-2」の形になることが多い。

まず後方では、7人の選手がビルドアップに関わる。

  • ゴールキーパー
  • センターバック+サイドバックの4人
  • ダブルピボット(守備的MF)2人

この配置は1-4-2の形になり、後方で安定してボールを保持することができる。

一方で前線では、

  • ウイングがタッチライン付近で高い位置を取る
  • 2人のFWが相手の守備ラインと中盤ラインの間にポジションを取る

という形になる。

ビルドアップの鍵となる「ダブルピボット」

デ・ゼルビの戦術において、ダブルピボット(2人の守備的ミッドフィルダー)はビルドアップの中心的な役割を担う。

彼のチームはゴールキック時でもオープンプレー時でも、ダブルピボットをあえて低い位置に配置することで、相手を前に引き出す

これは、相手のプレスを誘発し、その背後にスペースを作るための仕組みだ。

サイドへ展開するビルドアップ

相手を引き出した後、チームはショートパスを繋ぎながらボールを前進させる。

基本的な流れは次の通りである。

  1. GKとセンターバック、ダブルピボットでボールを保持
  2. 相手のプレスを引き出す
  3. タッチライン沿いに位置するサイドバックへパス

このビルドアップの過程では、ゴールキーパーが「3人目のセンターバック」の役割を担う。

これにより後方の数的優位が生まれ、サイドバックまでボールを展開しやすくなる。

中央に生まれるスペースを活用する

ボールがサイドへ展開された後は、フォワードや攻撃的ミッドフィルダーにボールをパスする。

ここで重要になるのが、先ほども伝えたダブルピボットのポジショニングだ。ダブルピボットが深い位置に下がることで、ピッチ中央にスペースが生まれる。

そのスペースを利用して、センターフォワードや攻撃的ミッドフィルダーがボールを受け、攻撃を加速させる。

ウイングの役割

一方でウイングの役割も重要だ。ウイングは高い位置でワイドに張ることで、相手のサイドバックを中央へ絞らせない役割を担う。

これによって

  • 中央のスペースが広がる
  • フォワードや10番がプレーしやすくなる

という効果が生まれる

まとめ

ロベルト・デ・ゼルビの戦術ポイント図|ビルドアップと数的優位の配置

デ・ゼルビの基本構造をまとめると、次の3点に整理できる。

①ダブルピボットを低い位置に配置し、パスを回しながら相手のプレスを誘う

②相手のプレスによって中央に生まれたスペースを、10番やセンターフォワードが活用する

③相手のサイドバックを中央に絞らせないため、ウイングは高い位置でワイドに張る

この仕組みによって、デ・ゼルビのチームはポゼッションを保ちながら相手の守備を崩し、ゴールを狙う攻撃を展開している。

③:数的優位

デ・ゼルビの戦術で、もう一つ重要な原則が数的優位を作ることである。

彼のチームはボール保持時に、7対6や3対1といった有利な人数状況を意図的に作り出しながら前進する。

この数的優位によって相手のプレスを回避し、安全にボールを前進させることができる。

GKを含めたビルドアップ

この数的優位を作るうえで重要なのが、ゴールキーパーの活用だ。

デ・ゼルビのチームでは、ゴールキーパーもビルドアップの一員として使われる。
ゴールキーパーと2人のセンターバックで後方に3人を配置し、相手のプレスに対して数的優位を作り出す。

さらに、ダブルピボット(2人の守備的ミッドフィルダー)の2人が最終ライン付近まで下がり、ビルドアップに関わる。

その結果、ゴールキーパー周辺の限られたスペースに6〜7人の選手が集まる形になる。
この密集した配置によって数的優位を生み出し、相手のプレスを引きつけながらボールを前進させる。

ロベルト・デ・ゼルビの弱点

失点の多さ

一方で、デ・ゼルビの戦術には明確な弱点も存在する。

彼のチームは攻撃的なスタイルを採用するため、守備面で多くのチャンスを相手に与えてしまうことがある。

例えばサッスオーロ時代の守備成績を見ると、

  • 2018/19シーズン:リーグ5番目に多い失点
  • 2019/20シーズン:リーグ7番目に悪い守備成績

さらに、サッスオーロでの3シーズン合計では総失点が179 と、攻撃力は高いものの守備の不安定さが課題となっていた。

カウンターへの弱さ

もう一つの弱点は、カウンター攻撃への対応である。

デ・ゼルビが率いたブライトンでは、次のようなデータがある。

  • カウンターからの失点:15(リーグ最多)
  • カウンターからのシュート被弾:51(リバプールに次いで2位)

この数字からも分かるように、攻撃時に前がかりになることで守備が手薄になる場面が多かった。

攻撃的なスタイルの代償として、カウンターを受けやすいという弱点がある。

ロベルト・デ・ゼルビがトッテナムを率いたらどうなるのか

最後に、デ・ゼルビが監督に就任したことで、トッテナムがどのように変化するのかを見ていく。

今回は、Optaのデータを参考にしながら解説する。

このグラフはチームの攻撃スタイルを示したもので、

横軸:攻撃1回あたりのパス数(Passes per Sequence)

縦軸:ゴールへ向かうスピード(Direct Speed)

を表している。

左上ほど「速くてダイレクトなサッカー」、右下ほど「パスをつないで崩すポゼッション型のサッカー」を表している。

ポステコグルー時代

ポステコグルー時代のトッテナムはグラフの中央よりやや上に位置している。これはパス数は平均的だが、ゴールへ向かうスピードが速いことを意味する。

つまりポステコグルーのサッカーは、ボールを素早く前進させる攻撃的なスタイルだったと言える。

トゥドール・フランク時代

その一方でトゥドールはグラフの左側にある。これはパス数が少なく、シンプルで縦に速い攻撃を行っていたことを示している。

また、トーマス・フランクはトゥドールとポステコグルーの間に位置している。
ポステコグルーと比較するとロングボールを使う場面が増え、よりダイレクトな攻撃を取り入れたスタイルだった。

デ・ゼルビのサッカー

では、デ・ゼルビはどうなのか。

デ・ゼルビが率いたブライトンはグラフの右側に位置している。
これはパス数が多く、ボール保持を重視するポゼッション型のサッカーを意味する。

2022-23シーズンはポステコグルーのトッテナムに比較的近い位置にあるが、
翌2023-24シーズンはさらに右側へ移動しており、縦へのスピードよりもポゼッションを重視するスタイルへ変化している。

このデータから考えると、トッテナムのスタイルはビルドアップの精度やポジショニングによって相手を崩すサッカー変化する可能性が高い。

ただし、今シーズン終盤に就任し、戦術を落とし込む時間が限られるので、当初はポゼッションに強くこだわるのではなく、ポステコグルー時代に近いスピード感のあるサッカーをベースにしながら徐々にスタイルを変えていく可能性が高いだろう。

終わりに

ここまで、デ・ゼルビの戦術について見てきた。

デ・ゼルビのサッカーは、ポゼッションをベースに自陣ゴール付近から相手を引き出すビルドアップと数的優位を作ることを軸とした戦術が特徴だ。

一方で、攻撃的なスタイルゆえにカウンターを受けやすいという弱点もある。

トッテナムの監督に就任したことで、今後はビルドアップとポジショニングを重視したサッカーへと変化していく可能性が高い。
デ・ゼルビの戦術がトッテナムにどのような変化をもたらすのか、今後の戦いに注目である。

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